「あの看護師さんは本当に優しいのに、なぜ辞めてしまったんだろう…」
あなたはそう感じたことはありませんか?
あるいは、あなた自身が「自分は優しいから、この職場は向いていないのかもしれない」と密かに悩んでいるかもしれません。
医療現場で15年以上看護師として働き、さらに10年以上人事担当として多くの看護師の退職や転職に向き合ってきた私には、その答えが痛いほど分かります。
実は、「優しい看護師」ほど、過酷な医療現場の現実との間に大きな「ギャップ」を感じています。
心身のストレスから退職を選んでしまうケースが非常に多いのです。
彼らが辞めたいと考えるのには、決して「仕事ができない」といった個人的な理由だけではありません。
むしろ、その「優しさ」ゆえに抱え込んでしまう、深い悩みや苦痛が背景にあります。
今回の記事では、私の豊富な経験に基づき、
優しい看護師がなぜ職場を去ってしまうのか
その本当の原因と共通点を徹底的に解説します。
そして、あなたの素晴らしい優しさを犠牲にすることなく、
- 長くキャリアを築いていくための具体的な対処法
- 失敗しない転職戦略
についてもご紹介します。
もしあなたが今、「辞めたい」と精神的に疲弊しているなら、一人で抱え込まないでください。
あなたの「優しさ」は、必ずどこかで必要とされる素晴らしい特徴であり、大きな武器になります。
優しい看護師が「辞める」と決断する職場環境のリアル

看護師の退職理由として常に上位に挙がるのが「人間関係」です。
特に「優しい」と評価されるタイプの看護師は、この職場の人間関係に大きなストレスを感じています。
辞めたいと考える傾向にあります。
ワンマン経営者やボスがいる

職種を問わず、退職理由の上位に来るのが人間関係です。
医療現場では特にその影響が大きいです。
私の経験上、ワンマン経営者やボス(医師や一部のベテラン看護師)がいる職場は、優しい看護師が長く続かない典型的な特徴です。
- 個人開業医(クリニック、診療所)の院長に目をつけられるリスク: 新人よりも長くいるスタッフを重視する傾向があり、新人がパワハラや不当な扱いのターゲットになりやすいです。
- 感情的な言動や理不尽な指示: 優しすぎる看護師は、このようなハラスメントに対し、正面から反論したり、毅然とした態度を取ることが苦手な場合があります。その結果、精神的な苦痛を一人で抱え込んでしまい、辞めたいという悩みが募っていきます。
ワンマン院長のパワハラに悩む優しい看護師が辞める前に知っておきたいこと
根深い新人いびり・陰湿ないじめが心を蝕む

看護師同士の人間関係で残念ながら見られるのが「新人潰し」や「いじめ」です。
- 仕事の押し付けと指導不足: 自分の仕事を新人に押し付け、質問しても答えてくれない、教えてくれないといった状況が続くと、新人は孤立し、「仕事ができない」とレッテルを貼られてしまうこともあります。
- 精神的苦痛と「うつ」のリスク: あからさまないじめや無視、他のスタッフとの露骨な態度の違いに精神的に疲弊し、うつ状態になってしまうケースも珍しくありません。優しい看護師は、このような状況を「自分の努力不足」と自己を責めてしまいがちです。
報われない努力と不公平な評価

どんな仕事でも「頑張りが報われる」ことは重要です。
しかし、一部の医療現場では、優しい看護師の真摯な仕事ぶりや努力が正当に評価されないことがあります。
- 見て見ぬふりの文化: 一人で必死に対応しても、周囲のスタッフが見て見ぬふりをし、「自分が仕事ができないと思われたくないから、他人の頑張りを認めない」といった職場環境が存在する場合。
- 組織の都合で使われる: 個人の優しさや真面目さを組織が都合よく利用しようとする場合、優しい看護師は自己犠牲を強いられ、精神的な疲弊につながります。
心優しい看護師が抱えがちな精神的・心理的負担

「優しさ」は看護師にとって不可欠な特徴ですが、時にその優しさが自分自身を追い詰める原因となることがあります。
患者への過度な感情移入が心身を蝕む

特に新人看護師に多い悩みの一つに、患者さんへの感情移入があります。
- 共感疲労とバーンアウト: 病棟で深く関わった患者さんの最期を看取ったり、辛い状況にある患者さんや家族に深く寄り添いすぎると、精神的な疲弊に繋がり、「共感疲労」や「バーンアウト(燃え尽き症候群)」のリスクが高まります。
- 優しすぎる故の苦痛: 「優しい」からこそ、患者さんの苦痛や悲しみを自分のことのように感じてしまい、それが精神的に辛いという理由で退職を選ぶ人も少なくありません。
関連記事: 看護師は患者に感情移入すべき?メリットとデメリット、辛い時の対処法を解説
面接時の説明とのギャップ

私自身が面接を担当することもありました。
現場の看護師不足は深刻です。
しかし、人材不足だから誰でも良いということではありません。
私が面接を行った際には、業界未経験の方にも注射や点滴、処置などの得意な分野なども細かく確認をさせていただきました。
しかし、こういう面接をしている医療機関ばかりではありません。
- 好待遇
- 休みがとりやすい
- アットホームな職場
などと好条件ばかりを謳っています。
しかし、現実は?
- 結果は残業が当たり前だった。
- 休日時間外出勤や急なシフト交代を平気で伝えてくる。
こんな現場もあります。
こんな状態が続くと、面接時と言っていることが違うということで、辞める人も多いです。
面接時の説明とのギャップに悩むあなたへ!入社後のミスマッチを防ぐための対策と注意点
患者に対する感情移入

特に新人の看護師に多い悩みの一つに感情移入があります。
病棟でとてもよくしてくれた患者様の最後を看取る時、家族と同様に感情移入してしまう人がいます。
忘れられない経験を積み重ねてしまうと、いつしか精神的につぶれてしまうのです。
言い方を変えると、優しすぎる人も苦しくなるのです。
看護師は患者に感情移入すべき?メリットとデメリット、辛い時の対処法を解説
現場の体制と患者の声に悩む

- 患者様により良いサービスを提供したい。
- 現場を変えたい。
積極的になればなるほど、医療現場の見たくない部分も見えてきます。
中でも、設備の老朽化による問題点は影響が大きい。
他の施設では当たり前のことが、なぜこの施設では古いやり方をスタッフに押し付けているのか?
こんなやり方をしているから患者様が苦労している。
こう思って、新しいやり方や設備の導入を進言する。
しかし、すべて却下。
こんなことを繰り返しているうちに、仕事が忙しくなっているのは、管理体制の問題だと気付く。
すると、これ以上何を言っても無駄と思ったら、静かに自ら身を引くという行動も多い。
新人に多い白衣の天使へのあこがれ

特に新卒看護師に言える内容です。
新卒の中には、ナイチンゲール看護にとらわれている人がいます。
ナイチンゲール看護とは、「新鮮な空気、陽光、暖かさ、静寂さを適切に滴余水、食事を適切に選択し与えるなど、すべての病人の生命力の消耗を最小限にするよう適切に行うことである。」
子どもたちの健康管理の基礎理念としても使われている内容です。
しかし、現場はそう簡単にはいきません。
時間に追われ、緊急や不測の事態にも臨機応変に対応しなければいけない。
つまり、学校で学んだことがほとんど通用しないこともあります。
組織から評価されない

頑張っていればいつかは報われる。
今は愚直に耐えるしかない。
自分一人で抱えてしまう人は、「いつかは」と願って頑張ります。
しかし、その頑張りを組織が都合よく使おうとすることもあります。
結果、いくら一人で必死に対応しても周りのスタッフは見て見ぬふり。
自分が仕事ができないと思われたくないから、他人の頑張りを認めたくない。
こんな環境になっている職場もあります。
誰にも何も相談ができない

簡単に言えば、いじめの対象になる。
他にも、看護師という職種は、一般のサラリーマンやOLと違うと思っている人が多いです。
具体的には、友達や昔の同級生たちに職場の悩みを打ち明けても「看護師って稼げるんだからそのくらい当たり前じゃないの?」と言われてしまう人もたくさんいます。
結果、誰も自分の状況や環境を理解してくれる人がいないという感情が芽生えてしまうと、「看護師なんて二度とやらない」と考えてしまう人も多いのです。
看護師は二度とやらない!離職率の高い職場の特徴|退職検討中の方必見!
優しい看護師が辞めたい時の対処法

正直、ストレス発散とかオンオフを切り替えるとか人間関係を変えるなんて言葉を口にする人は、ほとんど現場を知らないのだと私は思っています。
特にオンオフを簡単に切り替えられる人は悩みませんし、つぶれたりしません。
人間関係を変えることができる人は、ストレス解消ができます。
そんなことで解決するなら、このページは見ていないはずです。
私が伝えたいのは、辞めたい時の対処法です。
自分の健康状態を把握する

特に怖いのは、自分が今の職場に居続けてつぶれてしまうことです。
つぶれてしまうとは、簡単に言えば、鬱になってしまうという状態。
うつ病になってしまったら、その後の人生も大きく変わってしまう可能性があります。
隠れうつの人はたくさんいます。
現場で頑張りすぎていると、ついつい自分の健康状態を無視して働き続けてしまう人は多い。
だからこそ、医療機関で健康診断やカウンセリングなどを受けておくことをおすすめしたいのです。
場合によっては、休業したほうが良いと言われることもあると思いますが、その場合は素直に休みを取ることをおすすめします。
優しい看護師が転職で成功する方法

性格は簡単には変えられません。
そして、看護師の職場はどこに行っても似たようなものです。
私自身も個人の診療所、介護施設、総合病院など複数の医療機関で従事しましたが、やはりどこでも似たような悩みを抱えている人がいます。
ではどうしたら、自分の人生を楽しめるようになるのか?
異業種転職をしてみる

看護師の異業種転職は意外といろいろあります。
例えば、
- 保険の営業職
- 水商売
- アパレルや販売員のお仕事
- 介護用品などの取り扱い店舗のスタッフ
など、身体的特徴に対する悩みを解消するサービスに関わるお仕事でも資格は生かせます。
もう二度と看護師という立場を使いたくない方には、製造業など全く違うタイプの仕事を選んで結婚できたという人もいます。
優しい看護師が転職で失敗する方法

反対に失敗する方法もあります。
それは看護師用の転職サイトを利用すること。
正直複数ありますが、どの業界にも業界経験者や看護師はいません。
多くの会社がインセンティブ目的です。
採用に困っている施設を紹介する。
単なる営業マンやOLが対応しています。
有資格者が自分の履歴書を公開してまで依頼するようなサービスではないと伝えたいのです。
本当に現場が好きで、職場を変えたいと思ったら、まずは、自分で職場見学を希望することをおすすめします。
面接の前に、現場を見学するだけでもかなりイメージがつかめますよ。
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